・ ・ − − ・


・・−−・・−−

地球にいるビシソワーズ一家に向けて
この電波を送信する

ビシソワーズの諸君
マッシュ星はもう終わりだ
地球との衝突は避けられない
即刻任務を中断し
宇宙に避難しなさい

この事態を避けられなかったことは
我々も遺憾に思っている
なんとかして
マッシュ星の軌道をそらすか
地球の軌道をそらすことが出来ないかと
全ての分野の有識者が
総出で知恵を絞ったんだが
駄目だった
技術的な問題も
倫理的な問題も
あまりにも大きすぎたんだ

しかしマッシュ王は
星外退避政策への舵を切らなかった

マッシュに生きるものとしての
誇り
郷土愛
先祖代々受け継いだ場所への責任

王はそれを説いたが
地球との衝突を目前にして
賛同するものは多くなかった

私もそのうちの一派で
星外退避の準備を進めている
それは現在では犯罪扱いされているので
極秘に慎重に
王の動向を伺いながら
絶対に失敗せぬよう進行している計画だ

ビシソワーズと呼ばれる集団が
秘密裏に結成されていることが
分かったのは
その計画中の偶然だった

地球との衝突は必ず避けられると
力説する王の根拠がどこにあるのか
探っていく内に見つかったのが
君たちビシソワーズ一家
地球破壊の為の
特攻集団だった

マッシュ王は
本来ならば
為政に関わるはずのない
階級の者から数名を選び出した

下位階級であれば
権力によって無理を通せるし
事実のもみ消しも簡単だった
からだろう

君たちは本当なら
あるべき階級で
こんな重荷を背負うことなく
家族と共に平和に幸せに
暮らしてゆく
はずだったんだ

ビシソワーズの諸君
マッシュ星と地球の
衝突はもう避けられない
即刻任務を中断し
宇宙に避難しなさい

我々ももうすぐ宇宙に避難する
そこには君達の居場所も用意している
あるべき場所で
あるべき階級で
マッシュ星人らしく
人生を遂げられる場所だ

もう
マッシュ王からは
逃れていいんだ
君達の使命は
全くもって無意味で滑稽で
マッシュ王の理想の押し付け
なのだから

地球からの避難が完了したら
この電波に返信してくれ

この電波にも
この電波への返信にも
マッシュ王には知れていない
独自の暗号プログラムを
組み込んでいるから
大丈夫だよ

君達五人の無事と
避難の完了報告を
心より待っている

・・・−−−


・− ・ ・ − ・






「本棚」ページまで戻ります

作品解説(あとがき)