青い空。白い雲。アローラの輝く太陽が、木々に光の恵みを、花に鮮やかな色彩を与えている。
「んー、今日もいい天気!」 ベランダで洗濯物を干しているママの満足そうな声が聞こえて、もふふっと微笑んだ。 ピンポーンと、玄関のチャイムが鳴ったのはその時だ。 「あら、誰かしら? 、出てくれる?」 「はーい。」 と、がドアを開けるよりも早く、ドアノブがくるりと回って、来訪者が姿を現した。 「アローラー! 潮風に誘われ遊びに来たよー!」 「ハウ!」 よく見知った少年の笑顔に、は歓迎の「アローラ」を返した。ママもベランダから家の中に入ってきて、ハウを見つける。 「ハウくんアローラ! いらっしゃい。」 「お邪魔してまーす。」 「どうしたの、ハウ。いきなり来るからびっくりしたよ。」 「うん、あのねー、おれすげーいいこと思い付いたんだ! だから早くにも教えたくってー!」 ぴょんぴょん跳ねて言葉を紡ぐハウは、まるでポケマメを前にしたイワンコみたいだ。は笑いをこらえながら、分かったから落ち着いて、とハウをなだめた。ハウはへへっと一息ついて照れ、あのさー、と改めて口を開いた。 「リーリエに手紙を送ろう! おれとで! アローラのみんなの写真、いーっぱい付けてさー!」 アローラの太陽にだって負けないくらいの光が、ハウの瞳の中に見えた。 リーリエに手紙を送る、という話は聞いていた。リーリエとの別れの日、ハウ自らがそう約束していたからだ。すっごい長い手紙を書くから、と。 「で、その手紙にアローラのみんなの写真も同封すれば、今どうしてるかよく分かっていいでしょー。それを撮って回るのをに手伝ってほしいんだ。」 ハウをリビングに招き入れて二人で椅子に腰かけ、落ち着いて伺った話はそんな内容だった。「なるほどね」とはうなずく。 「そういうことなら、で良ければ。頼もしいロトム図鑑もいることだし。」 「ボクにお任せロト! 写真を撮るのは大得意ロト!」 ロトム図鑑が二人の間をぴゅんぴゅん飛び回った。島巡り以来の大仕事に、体中の電子を震わせて張りきっているようだ。 期待してるよー、と声でロトムを追いかけた後、 「考えていることはもう一つあって、」 とハウは続けた。 「写真を撮るついでに、リーリエ宛に寄せ書きしてもらうのってどうかなー。みんなから一言ずつあったら、嬉しいかなって思ってさー。」 こういう紙に、とハウはリュックから一枚の紙を取り出し、一人当たりこれくらいのスペースで、と指で紙の上に円を描いた。 「わあ、それはとっても良いアイデアだね!」 「でしょー!」 ハウはに賛同してもらえて安心した様子だった。 「あっ、そうだ。良かったらもリーリエに手紙書こー。寄せ書きとは別に。」 「あれ、ハウが書くんじゃなかったの。すっごい長いやつ。」 「もちろん書くけどー。でもおれ一人分じゃただの長いやつでしょー。も書いてくれたら、二人分で『すっごい』長いやつになるかなって思うんだー。」 上手いこと言ったつもりなのだろうか、ハウがにーっと歯を見せている。その表情を眺めていたら、なんだか頬がゆるんでしまって、は 「分かった。頑張って書いてみるよ。」 と約束した。 「みんなの写真を撮りに行くの? じゃあとハウくんの、二周目の島巡りってわけね。」 キッチンからパイルジュースを持って現れたママが、飛び回っているロトム図鑑を眺めながら言った。ロトムは「アローラのみんなの写真撮るロトー!」とか「試し撮りモード、試し撮りモード」とか言いながら、部屋中を撮影していた。活躍の場が与えられて、とっても嬉しそうだ。 ハウは、テーブルの上に置かれたパイルジュースに礼を言ってから、「島巡りほど長くはかからないと思うけど」と頭をかいた。 「でもー、確かにそうとも言えるかもー。」 とハウは互いを見る。二人で一緒に島巡りを始めたのがほんの数日前のことのような、もう三年くらいは経っているような、不思議な感じがした。を眺めるハウの心には今、二人の島巡りのどんな場面が映っているだろう。 「二周目もよろしくね、ー。」 ハウの言葉に、は「うん!」とにっこり笑みを見せてうなずいた。 次(2.ハウとハラの写真)→ 目次に戻る |