新しいブースターパックの発売日に決闘しようぜと、誘ってきたのは焔だった。それぞれ別にブースターパックを買ってデッキを組んでから集まれば、どんな能力のクリーチャーが出てくるのか分からないドキドキ決闘ができるだろ! との提案に、タメルも心踊ってすぐに快諾した。
焔と初めて出会ったデュエル・マスターズ大会の日、タメルと焔はすっかり意気投合した。驚くべきことに焔は、自身がデュエル・マスターズ界に行くことでその友達と出会ったそうだ。メテオがあちらとこちらを行ったり来たりしていたように、焔もまた両世界を行き来できた者だった。 「行き来……ってほどでもないけどな。なんで行けたのか未だによく分かんねえんだ。メンテは時空の穴がどうとか言ってたけど。」 焔は最初、デュエル・マスターズ世界で経験した冒険について多く語ろうとしなかった。誰も本気にしてくれなかったからさ、と彼は後に理由を話した。ところがタメルは本気にしないどころかもっと聞かせてとせがむので、焔はかえって戸惑ったようだ。タメルの純真さにちょっぴり呆れて笑いながらも、焔が少しずつ紡ぐ物語を、タメルはとてもワクワクしながら聞き入った。 何より嬉しかったのは、焔もまた同じような表情で、メテオが隣にいた時のタメルの話を聞いてくれたことだ。焔はもちろんメテオの存在を疑わなかった。そしてそれは多分、あの頃メテオと実際に会ったことのある子供たち以外では、初めてのことだった。 そういった経緯で、二人はその後もよく連絡を取り合うようになっていた。 今日は約束のブースターパックの発売日。ところがカードを買いに行く前のタメルの予定がずれ込んでしまった。急いでパックを手に入れ帰宅したはいいものの、デッキを作っていては遅れてしまうだろう。今からすぐに出れば間に合うだろうが。 (でも、せっかく焔が提案してくれたドキドキ決闘だもんな。) やっぱりちゃんとデッキ作ってから行こう。タメルはこのパックを開け終えたら遅刻の連絡をしようと決めた。そうして手にした最後の一パック。今までもう何度繰り返したか数えきれないその作業を、タメルは造作なく進める。抵抗なくすっと裂ける薄いプラスチック。隙間からのぞくのは、濃青の闇と渦巻く黄色い光の中にロゴが浮かぶカード。さあ、レアカードは入っているかなと、体温が上がるのを感じてカードを表向きにひっくり返す瞬間。飛び込んできた絵柄に、タメルはアッと息を飲んだ。 それからしばらく後、約束通りの時間に現れたタメルは、デッキを作ってきてはいなかった。代わりに彼は一枚のカードを差し出して見せ、大粒の涙をぽたぽた落としながら、くしゃりと微笑んだ。 ![]() テメェのクリーチャーは、健康か? Fin. 戻 「スケブのはしっこ デュエル・マスターズ」のページまで戻る カイの自己紹介ページまで戻る 夢と禁貨とバンカーと☆トップページまで戻る |