Symbolized










「小さい頃読んだ絵本に、禁貨のない世界の話があったわ。」
 テトの言葉に、プリンプリンは呆れ顔を浮かべた。
「そんな世界、あるわけないだろ。」
「……どうして?」
「考えてもみろよ。世の中にあるいろんな理不尽を、変える夢も希望もない世界だぜ。そんな世界で、人が生きられるかっつーの。」
 テトは釈然としない顔をしたが、何も言わなかった。プリンプリンにも一理あると思ったのは、その時彼女の視線の先に、赤い帽子に紫髪のツインテールが揺れる少年――コロッケの姿があったからかもしれなかった。
「その絵本、どんな話だったんだ?」
 横から会話に加わって尋ねたのは、ウスターだった。
 テトはしばらく思い出そうとしているようだったが、
「分かんない。」
 気まずそうに微笑んだ。
「忘れちゃった。もうずいぶん前に読んだ本だから……。」
 そっか、とウスターは相づちを打った。それで会話は終わりのはずだった。でもね、とテトが付け加えなければ。
「その話、禁貨がないこと以外は、普通の話と何も変わらなかったような気がする。」
 プリンプリンがちらとテトを見た。ウスターはふうんとうなずいた。テトは再び小さく微笑んだ。
「気がする、だけだけど……。」
 それでこの話は、彼らにとっては終わりだった。


Fin.





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