当作にお目通しいただき、誠にありがとうございます。ハウと共にアローラの人々に再び出会う旅路は、いかがでしたでしょうか。島巡りの景色を懐かしく思い出しながら、楽しんでいただけたのであれば幸いです。
サンムーンのエンディングが本当に大好きで、一人一人の登場人物とポケモンたちに思い入れがあります。思うままあとがきを書くと、間違いなくとっ散らかった長文になるので、今回はQ&A方式であとがき及び作品解説とさせていただければと思います。 Q.作品の着想を教えてください Q.どうしてグズマは出ないんですか? Q.エーテル財団職員のスカル団に対する姿勢は、どんなことを思って作品の形にしましたか? Q.タッパとラップってアニメに登場したしたっぱの名前ですよね? Q.作品の着想を教えてください A.サンムーンエンディングのスタッフロールの背景として流れる、アローラの人たちの写真にまつわるエピソードをテーマに、サンムーン発売三周年の記念作品を書こうと思いました! ……というのが表向きの回答です。もちろんこの思いにも偽りはないのですが、実はこの作品のきっかけはという問いに正しく答えるならば、「クリア後初めてハウに会いに行った時のイベントが訳分からんかったから」です。 当該イベントの流れはこんな感じ。 主人公が舞台に上がると、ハウ、スカル団員がこちらを見ている →ハウが主人公の名前を呼ぶ →ハウがスカル団員のほうに向き直り「ほらー! 続けてー!」と言う 以上です。 非常に短いイベントで、何が起きたのかぜんっぜん分からなかったんですよ……いや、なにを「続けてー!」なのハウさん??? って笑 ハウたちの様子からなんとなく「ハラがスカル団員をつかまえ、ハウが二人を指導している」雰囲気は伝わるんですけど、一体どういう流れでそうなったのか、想像の余地が大きすぎたので、「ハウとタスカル団についてクリア前後をつなぐ物語を書こう」と思ったわけです。 というわけで描写ポイントはエンディングイベント後から再びゲームを始めるまでの間に決定。そういえばこの間にスタッフロールあるな……あの写真ってやっぱリーリエに送るために特別に撮った写真だよな……そうだ写真撮影して回る話を軸にしよう、という流れでした。 三周年記念は後付けです。ただ、形になった時点で直近の11月18日(サンムーン発売日)を公開日にしよう、というのはわりと早い段階で決めていました。 Q.どうしてグズマは出ないんですか? A.スカル団解散後に主人公とグズマが初めて会うイベントは、原作中の殿堂入り後イベントであることを壊したくなかったからです。 当作は、エンディングのポートエリアエピソード後スタッフロール開始前の暗転間に起きた物語、というかなりニッチな位置付けです。ここでグズマが主人公やハウに会ってしまうのは、私の世界では違うと思いました。それで「グズマの写真」はあのような構成になっております。みんなの写真を撮りに行くのがテーマのお話の中で、一話ぐらい被写体が登場しない物語があってもいいかなって。 でもそれはあくまでうちのアローラでのお話なので、グズマさんがグソクムシャとポーズ決めてる写真を主人公とハウが撮るお話があれば、それはとっても読みたいです! 見つけたら教えてください!! Q.エーテル財団職員のスカル団に対する姿勢は、どんなことを思って作品の形にしましたか? A.ポケモンを傷付けるスカル団に対して敵意を持っている、という側面を強調しています。 エーテル財団職員がスカル団をどう認識しているかについては、二種類の答えがあると思います。 ひとつめはルザミーネの真意を知らなかった職員の場合。彼らは原作中でも随所に見られるように、スカル団に対して怒りと嫌悪を持っています。 ふたつめはルザミーネの真意を知っていた職員の場合。彼らはスカル団と手を組んだことを自覚しているので、それぞれの形で負い目や後悔を感じていると思います。 当作では主に前者に焦点を当てています。終盤で残党スカル団に視点が移るので、「スカル団があって良かった」と考える彼らの対比として、「スカル団なんてなければ良かった」と考える職員の存在が必要だったのです。 ハウはこの両視点を持ったうえで、あの態度と言葉を選択したということが、伝わっていれば幸いです。 Q.タッパとラップってアニメに登場したしたっぱの名前ですよね? A.はい。アニメに登場する男性のスカル団員タッパ、女性のスカル団員ラップから名前を頂きました。 ポケモンは複数の世界線があることを公認している作品だと、私は思っています。ゲームのアローラとアニメのアローラは別の世界です。しかしあえてそれを明言する必要があるくらいには、互いの世界はよく似ています。そのよく似た要素の一つが、主人公が初めて出会うスカル団員です。 少しメタ的な話になるのですが、主人公(プレイヤーまたはサトシ)が初めて遭遇する悪役って、ストーリー上かなり重要なポジションだと思うんですよ。対立する敵はどういう容姿なのか、何を主張して、どんなポケモンをどう扱うのか、などを直感的に理解させる役割です。 アニメではその役割の人物に、タッパという名前が付いていました。ゲーム中で同じ役割を持つ人物に、その名前が付いていてもおかしくない、いや付いているはずだ。そう考え、このお話のスカル団員にタッパという名前を選びました。 アニメのラップは女性で、語尾にスカも付けませんが「タッパといつも一緒にいる」「ズバット使い」という二点に同格を見出し、もう一人の名前として選びました。 余談ですが、そもそも彼らに名前を付けるかどうか、かなり悩みました。この話に登場するしたっぱ二人の名前は、原作中では最後まで明らかにならないので。実際、初稿は名無しのまま書き終えていました。 けれどこの物語にとって、彼らの存在は核と言っていいほど重要なものです。着想のところでも述べましたが、そもそも彼らとハウのお話が書きたくて始めましたからね。 それに、どうせこれからもハウとタスカル団のお話を書くんだったら、いずれ彼らの名前は必要になるだろうし、だったら今作でもう付けてしまおう、と思ったんです。 ……そう、ハウとタッパとラップのお話は、いずれまた書きたいなと思っています。 とりあえずハラの門下に落ち着いた彼らの苦悩や葛藤が、このお話ですべて解決したとは、私は考えておりません。きっとこれからも、彼らとハウとポケモンたちには、様々なドラマが待っているでしょう。 けれどもそれは別の物語、いつかまた、別のときにはなすことにしましょう。 最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!! 2020年7月吉日 カイ 目次に戻る |