あとがき






「ハウとポケモン」をお読みいただきまして、誠にありがとうございます。
ハウの島巡りの様子は原作ゲーム中、主人公の視界に入る範囲でしか見られません。しかし彼は間違いなく、語り尽くせないほどたくさんの発見・体験・大冒険を得ていたはず。その景色を「表題ポケモンとの一場面ずつ」という観点から、断章的に描いたのがこの作品です。ポケモンの愛らしさや、ハウとポケモンたちの成長と絆の物語をお楽しみいただければ幸いです。
以下、各ポケモンの制作裏話や作品に込めた思いを少々綴らせていただきます。



アシマリ/アシレーヌ
ハウが最初に手にした大切なパートナー。はじまりとおわりをこの子にするのは一番に決まりました。文章も構図も完全に対になっているので、アシレーヌの章をデザインする時には必ずアシマリの章も同時に見ることになり、まるでハウやアシレーヌと一緒にこれまでの旅を振り返っているような気持ちになりました。


ピチュー
ハウのピチューって進化するのめっちゃ早いんですよ。ゲームシステム上、相当なつき度を上げることを意識しないと、あのタイミングでは進化できません。だからハウはきっとピチューを連れてハウオリシティ歩きまくったんじゃないかなーって、そういうお話でした。


マケンカニ
後述しますが、一番書きたかった章が「ハウとケケンカニ」なんです。祖父のエースポケモンであるケケンカニをハウが手持ちに加えたことを知った時、とても感銘を受けました。同時に、ならばどうして初めからマケンカニを連れていなかったのだろうとも思いました。最終的にケケンカニを手持ちに入れながらも、マケンカニをゲットすることはできなかった理由。ハラに対するハウの複雑な感情が、この作品のテーマの一つです。


ピカチュウ
メレメレの大試練を終えた翌日、揚々としてアーカラ島へ向かう道中で、ハウは一言も自分の大試練について触れませんでした。あんなにそわそわしてたのに。あんなに本気のじーちゃんに勝つぞって意気込んでたのに。……何かあったな、と想像した内容です。


イーブイ
サンムーンではハウのイーブイの露出はほとんどないのですが、主人公とのオハナタウン戦の後、四番道路に戻ってゲットした、という解釈にしました。勢いでイーブイのキャラを超絶元気ボーイにしてしまいましたが、この後も文章やイラストの中でいいムードメーカーになってくれたかなと思います。


オシャマリ
オシャマリは最後にプロットが決まったポケモンでした。どんなエピソードも語れそうかつ手持ちにいる期間も長いので、大変優秀な調整ポジションを担ってくれました。ハウのセリフ「大好きだよ、○○。」はアシマリ・オシャマリ・アシレーヌに対してだけ言わせたセリフなのですが、お気づきになりましたでしょうか。
あ、もちろんハウはどの手持ちポケモンも大好きなんですけどね。構成の話です。


ブースター
原作ゲーム中で、姿の見えないハウに対してククイ博士が「ハウは……まだマラサダショップかな」と言った時、そんなわけないでしょう! と思ったのがこのお話を書くきかっけでした。ハウだって呑気にマラサダ食べてるばっかりじゃなく、一生懸命島巡りしているはずです。例えばそれは、ライバルへの対抗心やイーブイ使いあるあるの葛藤と戦う物語だったかもしれません……というお話でした。焦りと不安を乗り越えたハウの成長を感じていただければ嬉しいです。
ちなみにサンダース使いの老婆は、イーブイZ入手イベントで登場する「サンダース使いのオロチマル」です。プロットを立ててから彼女の存在を思い出したのですが、本当にぴったりな所にいたので、ちょっと運命を感じました。


ヤングース
エーテルハウス事件の後ハウはすっかり弱気になりますが、船着き場で合流した時には完全復活しています。何がハウを勇気づけ、腹をくくらせたのか。その幕間を想像したお話です。
余談ですが、ここのお話はウルトラ世界線だと大きく違うものになるだろうなーと思います。復活の鍵となるポケモンはヤングースではなく、最初のパートナーの中間進化形でしょうね。この作品であえてアシレーヌという最終進化形で登場させているのは、そこも少し意識しています。


ネッコアラ
原作中でハウがイリマと修行したことは明言されるので、その内容を想像して書きました。当初はイリマの助言を受けてハウがウラウラ島にネッコアラをゲットしに行く、くらいのストーリーでほのぼのパートにしようと思っていたのですが、「イリマがハウにネッコアラを託した」という可能性を思いついてからはあれよあれよという間にプロットが立ちました。


カプ・コケコ
ハウが神前でアローラの古い言葉をぽつりとつぶやいてたらカッコいいよねっていうお話です。作中の古語(ハワイ語) 'O Tapu Koko ka nui loa. は直訳すると「カプ・コケコは最も偉大だ」という意味。大いなるカプ・コケコよ、くらいの雰囲気です。


ケンタロス
ラナキラマウンテンで主人公を追いかけてきたハウが「おれの人生で最高のスピードだった」って言ってたの、もしかしてあれが、ケンタロスに乗るのを怖がっていたハウが初めてケンタロスに乗れた時だったんじゃないかなっていう漫画です。
この章は当初予定にありませんでした。連載時、ツイッターで「次の章はどのポケモンでしょう」ってアンケートを取って遊んでいたことがあったのですが、その時ケンタロスに票が集まりまして……じゃあケンタロスも書くかと考えたお話があまりにも短かったため、漫画にしました。漫画を描くのはほぼ初めてだったので、めちゃくちゃ苦労と回り道をして完成させた一編です。


ケケンカニ
一番書きたかったお話です! 「ハウとケケンカニ」が書きたくて、でもこれを書くならマケンカニのお話も書きたいなーとなって、マケンカニのお話を書くならその時の手持ちポケモンのお話も書きたいなーとなって、えーいそれならもうハウの手持ち全員のエピソード書いてやれ! となって結局手持ちじゃないポケモンのお話まで追加して完成したのが「ハウとポケモン」です。
細かすぎて伝わらないと思うのでここで言うのですが、このお話の中で、爆裂パンチを使うケケンカニのリスキーな戦い方にハウが惹かれる場面があります。これはハウが手持ちポケモンに高威力の反動技や低命中率技を覚えさせていることを根拠にしています(ウッドハンマー、フレアドライブ、気合玉、ストーンエッジなど)。原作のセリフ以外の情報によるハウへの解釈を表現できたのも、このお話の気に入っているところです。
些末な自己満足はさておき、この章にも何度か登場する「真っ直ぐに目を合わせる」ことが、当作全編通しての一つのキーワードでした。ハウが何から目を背け、何を真っ直ぐに見つめる覚悟を決めたのか。少しでも感じていただければ幸いです。


ライチュウ
ピチューの時に交わした約束はもちろんここで果たすつもりだったのですが、どこでどんな夕焼けを見つけるのかまでは決めていませんでした。執筆が終わりに近づくにつれ、彼らが自らこの景色を見つけだしたような感じを覚えたお話でした。



最後になりましたが、当作品に素晴らしいイラストをご提供くださいましたゲスト様、温かい応援や感想を書いてくださった皆様、そしてここまで読んでくださったあなた様に、改めて感謝の意を申し上げます。本当にありがとうございました。「ハウとポケモン」はここでおしまいですが、ハウとポケモンたちの物語はまだまだ続きます。続くったら続く!
けれどもそれは別の物語、いつかまた、別のときにはなすことにしましょう。

2019年2月 カイ



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