ゴールドベースに皆で集まっていた時、突然カイトが何かを思い出したらしく大きな声を発した。かばんの中をまさぐって、彼が取り出したのは数枚の紙切れ。
「じいちゃんにプリントしてもらったんだ。みんな分あるぜ!」 ほい、ほら、ほれと各人一枚ずつ手渡されるそれを、セキトも思わず受け取ってしまった。何だろうと確認してみると、 「ああ、この間みんなで遊びに行ったときの写真ですね!」 ミツオが嬉しそうに言った。 いつもと違う服を着て、お出かけリュックに駄菓子をつめて、とても上機嫌だったカイトたちの様子が、セキトの手元の写真に重なる。セキトは写る気なんてなかったのに、カイトに引っ張られて枠内に入れられ、ちょっぴりすねた顔で目線をそらしていた。 フクタとナガレも、写っている自分たちの姿をにこにこと眺め、きれいに印刷できてるねとか、楽しかったケドとか笑いあっていた。 「オレはいらねえ。」 セキトだけがそう言って、写真を机の上に置いた。一同が驚いた表情でセキトを見るので、セキトはかえって意外だった。 「この写真はもう持っている。お前らももらっただろう。カイトがメールで送りつけてきたやつ。」 「そうだケド……でも紙でもらうのも嬉しいんだケド。」 「何故だ? オレには同じに見えるが。」 「だーっ、分かってねえなあ、セキト!」 カイトが机に置かれた写真を拾い上げてセキトに突き付ける。 「同じに見えるとか見えないじゃなくて、こうやっていつでも見れるように印刷してんのがいーんじゃねーか!」 「バンクフォンに入ったデータだっていつでも見られるぜ。」 「そりゃまあそうだけど……。」 バンクフォンやパソコンにアルバムデータを保管している人も多いですよね、とミツオが納得する。確かにかさばらないのは便利なんだケド、と応じたのはフクタ。うーんだけどさーとカイトがしかめっ面をした時に、でもボクはと横入ったのはナガレで、 「写真を印刷してアルバムに貼るの、好きだな。」 カイトはそうだろそうだろーとうなずきながら、ナガレの助け船にひょいと乗った。 「なんつーかほら、確実に手元にある安心感っていうか!」 セキトはカイトから写真を受け取ると、それを眺めた。メールで受信した画像データと寸分違わぬはずの自分たちの表情は、インクの質量として紙の上に乗り、子供が笑うようにきらりと光を跳ね返した。 「確実に手元にある……か。」 セキトがぽつりとつぶやいた。 「そうだな……。データは消去されれば、それで跡形も残らねえもんな。」 カイトは、セキトの声がずいぶん遠い場所から聞こえたような気がして、不思議そうに彼をのぞきこんだ。 「……セキト?」 「もらっておく。」 「お、おう。」 カイトは深く考えるのは苦手だった。だから普段通りニカッと歯を見せて、 「これでケツ一個減るか?」 「バカ、ツケだろ。ケツが減ってどうすんだ。」 冷たくあしらわれて、なんだやっぱりいつものセキトだと、内心ほっとした。 ヘラヘラ笑うカイトと、慣れた様子で呆れる仲間たちの表情をそっとデータに保存して、セキトも寂しく微笑んだ。 Fin.
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